留学あきらめな医

英語力ない!コネもない!けど臨床留学した外科医の奮闘記

手術はアートか

「手術はアートだ」という人がいる。

私はこの意見にまずまず賛成だ。ただ、全部が全部、アートのように美しくする必要はないし、それ以外の要素や理論があっての手術、というのが本当は正解だと思う。手術はあくまで治療であるので、成績(患者さんが治ること)が一番なのは間違いない。なので、美しさなんて、手術には必要ない要素かもしれない。

実際、サッカーでもバスケでもゴルフでも野球でも、その所作が美しい人が一定数いるが、「美しい所作の人」が必ずしも「一流」とは限らないし、一流と言われる人の中には、誰もが認める「美しい所作」というものから外れた人もいる。ただ、そんな人の中にも美しい所作(流儀)みたいなものがある気がする。

ボクシングだと、ナジーム・ハメドがそんな感じ。オーソドックスなボクシングスタイルではないけど、独自のスタイルで勝ち続けた。彼のボクシングは、美しくアートで、彼をアーティストと言っても良いと思う。

 

話がそれたけど、美しさが手術に必要か?と言われると、そうではないと思う。ただ、美しい手術というのは実際に存在すると思うし、美しい手術を自分は目指したい。何をもって美しいのかは人によると思うので定義が難しい。きっと自分が美しいと思っても、他の人にとってはどこが?となることもあると思う。

 

私が思う美しさは、まずは無駄のない動きから来ていると思う。手術をみたことがある、したことがある人は分かると思うけど、手術中に無駄な動きをしていることはたくさんある。これはスクラブナースとのコミュニケーション不足が問題かもしれないし、自分の中で手順が決まっていないのかもしれないし、手順を覚えていないことが原因かもしれないし解剖が良く分かっていないのかもしれない。視線があっちこっち行ったり、手が止まっていたり、いらない動きをしていたり。関係ないところを剥離したり、雑に進めて出血したりはもちろん良くない。美しい手術とは、川の流れのように、ひたすら止まることなく淀みがなく、スムーズに進み、最小限の動き、最小限の剥離で、出血もほとんどなく、気づいたら終わっているような手術だと思う。

中にはスピードをとにかく意識して、雑な動きで進めていく人もいるけど、自分は全く惹かれない。かといって、慎重になりすぎてゆっくりしているのも全く良いと思わない。

 

もう一つ、持針器の持ち方だったり、攝子の持ち方だったり、も気になる。これは本当に個人的な好みかもしれないけれど。自分はいわゆる教科書に載っているような持ち方が好きだ。ただ中にはこれを崩してやっているトップの人もいるので、あまり関係ないかもしれない。

 

街中華が好きなので、よくyoutubeにあがっている動画を見ることがあるけど、無駄のない料理人の動きはほんとうに美しい。そして食材や器具の使い方もほんとうに綺麗。でもこういった料理人と、料理の美味しさがイコールなのかは分からない。料理人にとっては、美味しい料理を作ることが一番の目標のはずだから、こういった美しさは二の次なのかもしれないけど、料理人から見たらどう思うんだろう?やっぱり美しさも目指すものなのかな?自分ならこういう美しさのある料理人のほうが信用できるし、行ってみたくなるけど。

 

youtubeには、手術動画もたくさんあがっている。海外や国内の手術を見ていて、ほんとうにうまい!という人もいれば、よくこれで自慢できるな~という人もいる。ただ、そういう人でも成績が良かったりするんだろうから(実際の成績は知らないけど)、何が良いのかはよくわからない。単純に、自分が好きか嫌いかという、ただそれだけかもしれない。

 

何が言いたいのか分からなくなってきたけど、この前病院見学させていただいた際に見た部長の手術が、美しい流れるような手術だったので、自分もあんな風にできるようになりたいなということ。

練習あるのみ。